自由診療に対する誤解と理解の難しさ

・このことに悩むことになったきっかけ

「見た目はそんなに気にしないから保険診療をしてほしい」というこの言葉がすべてを集約しています。

「自費診療は“見た目を美しくするための贅沢品”であって、保険診療と比べて機能に大きな違いがない」と考えている方がまだまだ存在するという事です。また、歯科医師側でもそのように考えている先生がいらっしゃるのも事実です。

私の自由診療の解釈は「歯を少しでも長持ちさせるための繊細な治療(もちろん審美的な要件も含む)」となりますが、そうはいってもなかなかどこがどう違うのかイメージはわきにくく、簡単には納得できないのもよくわかります。

このことには関しては時間をかけて説明をさせていただき、患者様にも専門知識を得ていただく必要があります。

そもそも歯なんてどうでもいいと思っている方にとっては、説明し始めた時点で「そんなんどうでもええわ」と言われてしまいそうなマニアックな内容です。

ただ、いろんな歯医者にいっても自分の望み通り治してもらえず結局抜歯されてしまう方も多数います。

気づかぬうちにあまり質の良くない治療を繰り返された結果抜歯となるのです。

他院で「抜歯です」と宣告され初めて危機感をもって当院にご来院される方が多いですが、はっきり言ってもっともっと前に上質な治療さえ受けていれば抜歯になんてならなかっただろうなということが多いです。

その方々は本当に上質な治療をしてもらいたいと思ってるのにどこに行っても親身な対応をしてもらえず、いろいろな歯科医院にたらい回しにされ、結果的に抜歯と宣告されていました。

 

私の歯科医院はそういう行き場を失った方々の救いの場として活動できればと考えております。

逆に歯に関心がない方には向いていない歯科医院といえます。話が長い、治療1回1回が長い、値段が高いという評価になるでしょう。

 

・そもそも自由診療と保険診療の違いとは?

あくまでも私個人の感想ではありますが。

・自由診療はよりニーズに応えられる治療

・保険診療は必要最低限の治療

ととらえて概ね問題ないと思われます。

 

保険診療は全国どの歯科医院でも一律の料金設定です。

極端な話、1つの同じ治療に2時間かけて治療しても、10分で終わらせても全く金額は変わりません。

カウンセリングで1時間話を聞いても、2分で話が終わっても初診料は同じなのです。

 

ましてや立地条件が良くても、内装が新しく素敵でも、スタッフの対応が素敵でも、保険診療の費用は全く変わりません。

 

ということは、予約時間を十分に確保し、丁寧に話を聞き、一生懸命治療をする歯科医院に待っている結果は赤字経営です。

スタッフにも十分なお給料が払えず、内装のリフォームもできず、最新機材も導入できません。

 

自由診療はご存じの通り歯科医院が各々好きに値段設定ができます。

 

値段を自由に設定できるということは、ニーズに合わせて対応できる幅が増えるということです。

「保険より歯をきれいにしたい」「矯正は保険ではできないから」と理由で自由診療を選ぶのは一般的ですが、

 

「悩みをしっかり聞いてくれる」「高度な治療を、時間をかけて施術してくれる」「予約通りに診療され待ち時間がない」「綺麗な空間で過ごせる」「予約が取りやすい」「好条件な立地が良い」「良いスタッフが居る」というような理由も含め値段設定に差があっても良いという事です。

1000円で食べられるステーキ店もあれば、50000円も出さないと食べられないステーキ店もあります。

でもその値段の差、肉の質はもちろん違いますが、違うのは肉だけじゃないですよね?それと同じです。

 

1000円でなかなかおいしいステーキを提供できるなんてすごい!

50000円も出さないとステーキ食べられないとか企業努力が足りない!

という意見もでそうですし

 

1000円で食べられるステーキ店の肉は質が高くない

50000円で肉を提供するステーキ店は肉の質がいいし接客が良い

という当たり前の意見があってもおかしくない

 

でも2つのお店はそれぞれの信念のもとにステーキを提供しているのであって、どちらが優れていてどちらが劣っているなんてことはないのです。

 

汚い店で接客態度もあまりよいとは言えないが、5000円で上質なステーキが出てくるお店があってもいいし。

 

ステーキの質はそんなに良くないが、上質な接客態度、素敵な夜景の見える空間で5000円のステーキが出てくるお店があってもいいのです。

 

保険診療の治療というのは言うなれば大手チェーン飲食店の質のイメージ。

難易度の高い治療を受けたい場合保険診療ではやはり難しいです。

 

でも世界から比較しても非常に安価に歯科治療が受けられる大きなメリットがあります。

 

ただ、ここからは私見になりますが、歯科の場合は料理を提供するのとは違い、その場限りの話ではありません。今後一生痕跡が残る治療なのです。

歯は失ってしまうと二度と戻りません。

笑ったとき歯が汚いと印象を悪くするかもしれません。

毎日使う歯、毎日見える歯、死ぬまで使う歯、死ぬまで見える歯なのです。

 

だからこそ妥協せずしっかり治療をしておくべきだと私は考えています。

 

・イタガキ歯科が自由診療を強化していこうと思う理由

悩みがあって相談したくても忙しそうで全然話を聞けない

相談しても「そんなもんですよ」と言われた

治りますと言われ続けずっと治療しているが治る気配がない

 

診療にかかる費用は確かに安いに越したことはありません。

しかし本当に困っている人は多少値が張ってもその悩みを解決したいものです。

 

何度虫歯治療しても数年後また悪くなってやり直しでもOKな人もいれば、それが嫌な人もいるのです。

 

虫歯治療は歯を削る行為、一度やると二度と元に戻らない治療です。「二度と戻らない」とはどういう意味か?

「虫歯が治った」は狭義での「治癒」ではありません。

狭義の「治癒」は「風邪ひいたけど治った」「切り傷ができたけど跡形もなく治った」という状態。

「足を失ったので義足にする」が「治癒」ではないのと同じです。

 

・今後自費診療はどうなるか?

この記事を書いている現在、私は歯科医師になって9年目。 

歯科医師になりたての研修医の頃は「とにかく手を早く動かせるようになってたくさんの患者様に貢献しよう」と考え、

友人と「俺は〇〇分で〇〇の処置を終わらせられた!」とか、「一日に〇〇人も診療できるようにスピードアップできたよ」という話で、いかに手際よく診療を行うことができるかを競っていました。(もちろん手を抜いてスピードアップしたわけではありませんよ)今でもスピードアップは必要努力であり悪いことだとは思っていません。

 

しかし2年目以降になってくると診療の手際の良し悪しで困ることはあまりなくなり、難症例に立ち向かえる技術があるかという事で競うようになりました。

友人とも「この画像みてよ、俺こんな難しい症例治療したんだよ」というような話題に変化していきます。

 

難症例に立ち向かいたくなる理由はいくつかあります。

「困っている患者様をなんとかしてあげたい」という気持ち、「難しい治療をこなせるカッコイイ歯科医師になりたい」という気持ち

でも実は最も大きかった要因は「突き詰めるのが楽しい」でした。

 

小さいころから何かを作るときは徹底的にこだわる性格で、すぐに壊れてしまいそうなモノや妥協的に作られたモノが嫌いでした。

やるなら徹底的にやりたくなるのです。

 

歯科医師歴2年目後半には父が病に倒れ、私が歯科医院を継承、開業医として歯科医院の運営が開始しました。

 

保険診療を主体とした診療でしたが、難症例が来ても逃げずに一生懸命治療に取り組みました。しかし一生懸命すればするほどひとりひとりに対する治療時間は長くなってしまい、経営は悪化。

また「治療に時間をかけたほうが良い」という事がわからない患者様から「先生ずいぶん時間かかってたな、よその歯医者さんならもっと早く終るよ」など心無い言葉も受け日々精神的に疲弊しました。

その後父は他界してしまい、当時のスタッフは新人の私を信頼してくれない、難解な保険請求制度への対応、わけのわからない盛沢山の書類、思い通りにいかない診療、患者様からのクレーム…

 

 

私のポリシーは「自分が受けたいと思う治療を提供する事」

でも現実的には多少雑でも短時間で治療を終えてしまったほうが患者様にも満足してもらえるし、経営状態も良くなる。だから不本意だけどそういう仕事をしないと歯科医師として生きていけないのかと何度も思いました。

でもそれは絶対に嫌だったのです。

 

そうやって悩みつつも治療だけは誠意をもって行い続けました。

そうすると次第に「先生、ホンマにいつも一生懸命してくれるなぁ。感謝してるで」というようなお言葉をいただくことが多くなり、その言葉は疲弊した私を強く支えてくれました。

「先生、時間とかお金かかってもええから先生がやりたいようにやってええよ」と言っていただけ、私に信頼を置いてくださっているんだなと、すごく嬉しい出来事も増えました。

スタッフも私がやりたいと思っていることがなんなのか、少しづつ理解してくれている実感がありました。

 

そうして、私の考えに共感してくれる人は思ったより居るのかもしれない、自費診療の意味を理解してくれる方が思っているよりいるんだと感じられるようになりました。

 

そこでいよいよ本格的に自分のやりたい診療ができるように自費診療を主体とした歯科医院づくりを始めようと考えました。

悪かった経営状態は良くなり、診療に必要な高級機材が買えるようになり、診療時間にも多少ゆとりがでるためひとりひとりに向き合うことができ、良い診療に向けて勉強する時間の確保もしやすくなりました。

ゆっくり変化したのであまり実感はないですが、思い返せは5年前に目指していた夢が、今は叶っているのかもしれません。

 

今後もこの調子でさらに勉強を積み重ね、もっともっと難易度の高い治療に対応できるようになりたいですね。